JASRACの「音楽教室から著作権料徴収」というニュースを見て

今回はちょっと長くなりますよ!
こんな気になる記事が出ました。

音楽教室で使用する曲から著作権使用料を徴収!?

ヤマハや河合楽器製作所などが手がける音楽教室での演奏について、日本音楽著作権協会(JASRAC)は、著作権料を徴収する方針を固めた。
徴収額は年間10億~20億円と推計。
教室側は反発しており、文化庁長官による裁定やJASRACによる訴訟にもつれ込む可能性もある。
著作権法は、公衆に聞かせることを目的に楽曲を演奏したり歌ったりする「演奏権」を、作曲家や作詞家が専有すると定める。
この規定を根拠に、JASRACは、コンサートや演奏会のほか、カラオケでの歌唱に対しても著作権料を徴収してきた。
音楽教室では、1人または数人の生徒と教師が練習や指導のために楽曲を演奏する。
JASRACは、生徒も不特定の「公衆」にあたるとして、この演奏にも演奏権が及ぶと判断。作曲家の死後50年が過ぎて著作権が切れたクラシック曲も使われる一方、歌謡曲や映画音楽などJASRACが管理する楽曲を使っている講座も多いとみて、著作権料を年間受講料収入の2・5%とする案を検討している。
7月に文化庁に使用料規定を提出し、来年1月から徴収を始めたい考えだ。
http://www.asahi.com/articles/ASK213QYXK21UCVL00P.html

著作権管理団体である、「JASRAC」が音楽教室で演奏される曲について著作権使用料を徴収する方針を固めたそうだ。
レッスン活動を行っている自分としても、見逃せない。
これが決まれば、ポップスなど最近の曲はレッスンしにくくなってしまいます。
尺八だからといって、昔の曲ばかり教えているばかりじゃないのです。

生徒は「公衆」なのか?

さて、これがJASRAC批判につながっているのは、この根拠が「演奏権」なため。
「演奏権」というのは、

著作権法では、公衆に聞かせることを目的に、楽曲を演奏したり歌ったりするという「演奏権」について、作曲家や作詞家が専有すると定めている。この演奏権を根拠にこれまでJASRACでは、コンサートでの演奏やカラオケでの歌唱などでも著作権使用料を徴収している。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/03/story_n_14587522.html

コンサートなどで最近の曲を演奏する場合、申請書を作り、使用料を支払っています。

さて、今回問題になっているのは音楽教室の生徒が「公衆」にあたるのか?ということで、いくらなんでもJASRACは強引じゃないかい?という意見が多いみたいです。
確かに、レッスンというのは閉鎖された空間で行うのが通常。
グループレッスンなどもありますが、ほとんどは1対1の個人レッスンが多いのではないでしょうか?
これをコンサートなどと一緒の解釈っていうのは、強引すぎ!と言われても仕方ないような…。

さらに徴収方法も「受講料収入の2.5%」と一律で徴収すえう方針のよう。
がんばってクラシックなど、著作権切れの曲を使っても関係なくなってしまう。
実際問題、何の曲がレッスンに使用されているのか調査するのは難しい、ということなんでしょうが、
そんなん、楽して金よこせと言ってるのと同じだろ!
と言われてしまうのもしょうがないかもしれません。

当然、音楽レッスン業界は反発しているので、今後に注目

まあ当然の反応なのですが、ヤマハやカワイといった大手音楽教室業者は猛反発。

JASRAC(日本音楽著作権協会)が音楽教室などで楽曲を使用する際にも著作権料を徴収する方針としたことを受けて、ヤマハなど7つの企業、主要団体が2月3日、「音楽教育を守る会」を発足した。
会の代表はヤマハ音楽振興会が代表。河合楽器製作所、全日本ピアノ指導者協会などが加わっている。「関係各社、各団体へ参加を呼びかけ、合同でこの問題にあたってゆく」と発表した。

こういったことが続くと、レッスン事業の衰退に繋がります。
音楽教室から将来の音楽家が育つ可能性があるわけですから、是非とも頑張って欲しいもんです。

JASRACは全てダメなのか?

こういうニュースになると、JASRAC批判は燃え上がりますが、果たしてJASRACは必要ないのか?
ちゃんと存在するメリットはあります。
私は小規模ながら楽譜の出版をやっていますので、JASRACとは無関係ではありません。
基本的にポップスのカバー楽譜が主なので、販売する際は、かならずJASRACに申請しています。
もしJASRACがなかったら、作曲者などに直接連絡して許可をもらい、さらに曲ごとに使用料の交渉して…など考えただけでとんでもない手間がかかります。
それがJASRACのおかげで、ウェブサイトから申請して規定の使用料を支払う、とかなり簡略化されています。
著作者にしても、どこで自分の曲が使われているか全て把握するなんて無理でしょう。
それをJASRACが代わりにやってくれるので、とても楽。

結局、団体の存在意義としては非常にメリットがありますが、運営の仕方に批判が多い、というのが現状ではないでしょうか?

和楽器業界の抱える問題

ちなみに和楽器業界は、今「楽譜問題」を抱えています。
ようするに楽譜が売れなくて困っている、という状態です。
出版社もどんどんつぶれて減っています。

私が尺八を始めたのは20年ほど前の大学生時代ですが、あの頃手に入った楽譜も今では絶版なものが本当に多い。
または大幅に値上がりしたものもあります。
そもそも販売店なんて無いに等しいのです。
楽譜が欲しかったら、出版社に直接問合せて送ってもらうのが一般的。
もしくは、楽器屋さんを通して購入する人も多いでしょうか?

そもそもやっている人が少ないから売れないのも当たり前、っていう話。
あとは、コピー機の普及も確実に影響しています。
大人数でも一冊買ってあとはコピーで済ます、なんてことも珍しくないでしょう。
これらの影響で、売れない、売れないから出版社も減っていくという悪循環。
私も、楽譜出版にあたり、和楽器業界最大手であろう某社の社長さんとお話する機会がありましたが、「今は楽譜売れないから…」と仰っていました。

しかし、出版社がなくなっていくと、結局困るのは演奏者たちなんです。
やりたい曲があっても、どうしても楽譜が見つからない経験は、和楽器奏者なら誰でも経験しているのではないでしょうか?

と、いうわけで楽譜はきちんと買いましょう!

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